◆トレーニング手段を考える<B-up走・変化走・ファルトレク>◆
今回はビルドアップ(B-up)走、変化走、ファルトレクについて考えてみたいと思います。これらの共通点は複数のトレーニングカテゴリーにまたがるということです。
強度的には狙いによって75~90%HRmax(マラソン~5000mペース)と85~100%HRmax(10000m~1500mペース)の2つの強度帯に大きく分けることができます。前者は乳酸性作業閾値の向上から乳酸再利用能力の向上を狙った強度帯への刺激、後者は、乳酸再生能力の向上から最大酸素摂取能力の向上を狙った強度帯への刺激が狙いとなります。
ビルドアップ(B-up)走は決められた距離を徐々にペースアップしていく持続走のことを指します。単純な持続走よりも高度なトレーニングに位置付けされ、LT値あたりのペースアップで乳酸性作業閾値の向上、Vo2maxあたりのペースアップで最大酸素摂取量の増大というように、狙いの強度帯までのペースアップとその維持によってトレーニング効果が得られます。また、カテゴリーをまたいだ区間毎の段階的なペースアップを通して、一段上の強度レベルへのスムーズな移行、導入に向けたカテゴリー間のトレーニングの橋渡しの役割も担います。
最終的に目的の強度領域までペースアップできなければトレーニングの目的が半減してしまうため、前半は特にオーバーペースに注意しなければなりません。そのため、トラックや細かくペースチェックができる距離表示のある公園の周回コースなどで実施することが望ましいと考えられます。
一方、B-up走が決められた距離を段階的に徐々にペースアップしていくのに対し、変化走は決められた区間でペースを上げ下げしていきます。落とす部分でも常にリズムを保ち、ペースを維持していくことでよりレースに近い負荷をかけることができるのですが、気を抜くとすぐジョグのペースに落ちてしまい、通常のインターバルより難易度が高いメニューだといえます。これらのことから、それぞれのパフォーマンス要因の強化が充分に終わった後の各要因をを統合し、レース戦略をシミュレーションする手段として有効なトレーニングだと言えます。
加えて、速いペースとJogではない、そこそこのペースでのつなぎを繰り返し、さらに最後を全力に近いレベルまでペースアップすることで、乳酸を出す⇒再利用するという乳酸サイクルのシステム強化(乳酸再利用能力の向上)にも繋がります。ここでもつなぎのペースの維持が大事な要因となってきます。
このように、変化走にはペースの上げ下げの距離やペースの正確性や確認が鍵となってくるので、トラックや細かな距離表示が設置されている公園の周回コースの利用が望ましいです。
ファルトレク・スピードプレイと呼ばれるトレーニングは1930年代に北欧から派生した丘陵・森林など多様な地形で行う変化走であり、特にきっちりと距離を決めず、ペースアップ・リカバリー区間を自分の意志、気分によって設定するのが特徴です。ある意味、タイムや距離のプレッシャーからの解放されるため、休養期明けや、レースが続く期間に有効なトレーニング手段です。しかし、自由度が高いためグループ内のメンバーに実力差がありすぎると楽過ぎたり、逆にきつ過ぎたりしてしまう危険性があるので、一人で行うか実力レベルに応じた少人数のグループ分けなど工夫が必要です。慣れるまでは、ある程度の区間距離やペースの目安を作るとイメージが湧きやすいかと思います。
変化走の一種ですので、同様の速いペースとそこそこのペースでのつなぎの反復による乳酸再利用能力の向上という効果が望まれ、さらに起伏、不整地を利用することでペース以上の効果がさらに期待できます。また、複数人で行う場合、上げ下げの距離やペースが相手任せになるため、よりレースに近い状況を作ることも可能です。以下にKenya選手の1分(1分)×30のFartlekトレーニングの動画を載せておきます。Fartlekのイメージ作りの助けになれば。大人数でやっていますね…。
以上のB-up走、変化走、ファルトレクの目的とトレーニング強度および量の目安をまとめました。参考にしてください。
次回は、インターバルトレーニングについて考えてみたいと思います。
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