スポーツ科学・理論 [基礎知識]

トレーニングは何のために行うの?(トレーニング科学入門①)

◆はじめに◆

皆さん、韋駄天ランニングアカデミーのランニング科学・理論のページへようこそ。 ここでは、筑波大学をはじめとするランニングおよびスポーツ医科学の専門家の先生や学生が、ランナーの皆さんの様々な「もっと」に応えられるような科学的知見を、どんどん提供してくれます。 しかしながら、中には専門的な情報にはものすごく興味はあるけど、まだ少し敷居が高いな、難しいんじゃない?と感じているジュニアランナーや初心者ランナーもおられるかと思います。そのような方々に、入り口としてこの「トレーニング科学入門」をまず覗いていただき、その後に先生方や学生たちの専門講座を通して、どんどんランニングの沼にはまってもらえれば幸いです。

◆トレーニングは何のために行うの?◆

このサイトを訪れて下さった皆さんは、レースに出場して豪華入賞賞品獲得、自己記録更新、完走などを、あるいはレースに出なくても、いついつまでに何キロ減などのダイエットや健康維持を目標に日々のトレーニング(ランニング)に取り組んでおられるランナーだと思います。 ここで大事になってくるのは、何時間何分で走る自分や何キロになったスリムな自分など、「決められた期日になりたい自分」が明確に描かれているかどうかです。 この「決められた期日になりたい自分」がレースにおける目標(パフォーマンス目標)となります。

「なりたい自分」と「現在の自分」には当然ギャップが存在します。ダイエットであれば、目標体重と今の体重との差、テストであれば、合格ラインと今の実力との差であり、競技スポーツでは、レース当日に目標を達成するために必要なパフォーマンスと現在のパフォーマンスとの差となります。 このパフォーマンスのギャップを埋めるために必要なモノ(体力的要素、技術的要素、心理的要素・・・)を創り出す作業がトレーニングなのです。ですので、トレーニングにおいて「なりたい自分」を明確に描くこと、「現在の自分」を知ること、「なりたい自分」になるためには何が必要なのかということをしっかりと把握することが重要となります。それが無ければ、ただ単にトレーニングを消化するだけになってしまい、決して目標達成には繋がりません。 これらのことから、トレーニングとは、すること自体が目的ではなく、その先にある「なりたい自分」になるための手段の一つだということがわかっていただけるかと思います。 このことが分かっていれば、自主トレーニングの意味も理解してもらえるはずです。 部活動などチームで活動している場合、どうしても基本(チーム)トレーニングの提示となってしまいます。しかし「なりたい自分」になるために必要なものは人それぞれです。ここで、トレーニングをやることが目的ではなく、レースでの目標達成の手段なのだということが理解できていれば、基本トレーニングを消化したことで満足せず、なりたい自分になるために必要なトレーニングが足りていなければ自主的に追加できるでしょう。 基本トレーニングと自主トレーニングは、定食と一品追加との関係です。貧血気味で定食では補えていないなと思えば、ほうれん草のおひたしを自分で追加すれば良いのです。

◆スポーツ医科学情報の活用◆

このなりたい自分になるために必要な様々な要因の到達点がトレーニング目標であり、このトレーニング目標の設定にスポーツ医科学の情報の活用が非常に有効となります。

スポーツバイオメカニクスや運動生理学、体力学などの観点から、自分のパフォーマンスが「どうなっているのか?」、スポーツ医学、心理学、栄養学などの観点から「何故そうなっているのか?」という情報を集約し、分析することで、何が出来ていて、何が出来ていないのか、何をどうすれば良くなるのかを、より明確にすることが可能となります。

次回は、トレーニング目標の設定の肝となる自分の運動(種目)を理解するというお話をしたいと思います。

この記事を書いた人
木路 コーチ
20年間、自身の競技と指導活動で大塚製薬陸上部にお世話になったのち、筑波大学大学院のスポーツマネジメント領域に進学し、高度競技マネジメントの研究に携わり、現在、大学生の長距離指導者としての人生を歩んでいます。 専門分野としては、コーチング学(目標論、方法論、評価論)とスポーツマネジメント学(組織論、強化システム論、企業スポーツ論、地域スポーツ論)となりますが、そんな堅苦しいことではなく、自分を育ててくれた「ランニング」で得たものを使って、何かしらの恩返しができれば良いと思っています。よろしくお願いいたします。

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